売れる商品陳列の方法とは?すぐに実践したいテクニックを解説

店舗の売り上げアップを狙いたいとき、重要なのが商品陳列の方法です。
同じ商品でも商品陳列を変えるだけで魅力的に見えるようになり、来店者も手を伸ばしやすくなります。ある意味では売れる商品を作るには、品質とともに「魅せ方」も重要な要素となります。
そこで本記事では店舗の開業予定の方や売り上げアップを狙う方、店舗を任されている店長などに向け、店舗の商品陳列の手法とテクニックをご紹介します。
関連記事
●目次
商品陳列の目的は?なぜ重要?
商品陳列を重要視する理由は、来店者は目にした情報から購入を決める部分が大きいためです。
たとえば、スーパーで牛乳を1つ買う際にも、目線の高さに陳列された物と、端に陳列された物では手に取られる回数が変わるでしょう。価格帯や産地が同じでも、店舗では目に留まりやすいものから売れていく傾向があります。
また、逆に購入する商品を決めていない来店者に対しては、いかに商品を魅力的に見せるかが課題になります。来店者の目に魅力的に映れば「試してみよう」という気持ちに繋げることができるかもしれません。
商品陳列の基本ルール
店舗の商品陳列には基本とされる陳列ルールがあります。基本に沿って商品を並べていくことで、売り込みやすい店内環境を作ることが可能です。
高度なテクニックを活用するためにも、まずは基本ルールを確認していきましょう。
- 購入者の視点を想像する
商品陳列を作るときにまず考えておかなければならないのが、購入者の視点です。購入者が求めるニーズと商品が合致していなければ、せっかくの良い商品も手に取ってもらえません。
そこで来店者をリサーチし、想定する購入者を定めていきましょう。視点を決める際には、次の3つを軸に想像してみてください。
- 商品を売り込みたいターゲット
- ターゲット層のニーズはどのようなものか
- 商品のどのような点がニーズとマッチしているか
商品を売り込むターゲットが定められれば、そこからニーズを想像した配置が可能になります。ニーズに合わせた商品陳列ができれば、購入してもらえる関連商品を増やせる可能性があるでしょう。
また、実際に売れた商品から、どのような点がニーズとマッチしているか調べることで、さらに別の陳列も考えられるようになるでしょう。
- 配色は色相環を意識する
商品を陳列する際は、色相環を意識して配色にも気を使っていきましょう。色が与える心理作用は大きいため、配色をうまく活用することで商品のアピールが可能です。
なお、並べる配色は色相環の赤から同系色を辿るように、順番に並べていくのが良いと言われています。色相環に沿って並べると次の順番です。
- 赤
- 橙
- 黄
- 緑
- 青
- 紫
商品数が多い場合は色相環に沿って色が薄いものから順に並べると、統一感が出て洗練された印象を与えやすくなります。また、反対色同士の商品を置くことで、注目して欲しい商品を目立たせることも可能です。
どのように商品を扱いたいかによっても効果的な配色は変わりますが、上手に活用できれば、商品の魅力を引き立て、購買意欲を高められるでしょう。
- 安全性を確保する
基本として、店内の安全性を確保することも忘れてはいけません。必要以上に商品を積み上げた不安定な陳列は、心理的にも手に取りにくく、実際にケガに繋がってしまう恐れもあります。
また、店内の配置が狭すぎると、品出しのスタッフや来店者が接触事故を起こしてしまうかもしれません。あくまでも店内は安全に買い物を楽しめる空間づくりを前提として配置を行っていきましょう。
商品陳列の手法
商品陳列には、さまざまな手法があります。基本ルールをベースに、扱う商品に合わせて選んでいくことで、効果的な売り場作りが可能です。
手法ごとに効果が異なるため、まずはそれぞれの強みを把握していきましょう。
- 垂直にまとめる縦陳列
縦陳列は、同じカテゴリの商品を垂直にまとめて陳列する手法です。縦列で上下の同カテゴリの商品を比較でき、横に移れば別カテゴリの商品を見ることができます。整然とした商品陳列ができるため、一目で商品を探して比較検討しやすい特徴があります。
ただし、シンプルな陳列になっており、個々の商品が埋もれやすいため特定の商品をアピールしたい場合には向きません。特定の商品を売り出したい場合は、POPを活用したり、別の陳列を検討する必要があるでしょう。
なお、縦陳列は主にスーパーの野菜売り場など小売店で用いられています。日用品や食料品など、定番商品を素早く選びたい顧客が多い売り場に適しています。
- 横一列にまとめる横陳列
横陳列は、横一列に同じカテゴリの商品をまとめて並べる手法です。商品を大量に扱えるのが大きな特徴で、同カテゴリで商品数が多い場合に向いています。また、在庫の把握や商品の補充も効率的に行えます。
また、商品がまとめられているため来店者の目を引きやすく、個々の商品を目立たせやすい強みもあります。スーパーなどでは、調味料やバターが売られている商品棚などで用いられます。
- 立体感を出すトライアングル陳列
トライアングル陳列は、三角形を意識して並べたり積み上げたりする手法です。商品を段々に高さを変えて積み上げたり、三角形の形に並べたりすることで、トライアングル陳列を作ります。
三角形から感じる「安定感」や「美」の印象を利用し、商品を魅力的に見せる効果があります。
また、トライアングル陳列は整然とした陳列の中に作ると、周囲との余白が生まれます。
余白があることでトライアングルに置かれた商品は際立ち、来店者の目を引くことができます。売り場全体にもメリハリが生まれるため、飽きにくい店内空間を作ることが可能です。
なお、トライアングル陳列はスーパーやベーカリー、雑貨店やバラエティーショップなどで用いられています。一般的には新商品や季節限定商品、キャンペーン対象商品など、特に注目して欲しい商品などで活用されています。
- 左右対称に置くシンメトリー陳列
シンメトリー陳列は、一区画で左右対称に商品を配置する手法です。シンメトリー=左右対称も、人が「美しい」と感じるバランスだとされており、目を引きやすいことから陳列にも用いられています。
たとえば、売り出したい基本の商品を中心に置き、同じ商品の色違いやバージョン違いなどを左右対称に配置することで、バランスの良い対称美を作ることが可能です。また、違う商品でも、同じ形の商品を左右対称に置くことで、まとまり感のある配置ができます。
シンメトリー陳列は視覚的なインパクトが強く、商品の存在感を高められるため、売り場の主役となる商品を際立たせることができます。店舗では食品や雑貨、電化製品など、バリエーションが多い商品の陳列に活用されています。
- カゴを利用したジャンブル陳列
商品陳列の手法には、アイテムを活用したものもあります。その1つがジャンブル陳列です。
ジャンブル陳列はカゴなどの入れ物に入れ、手に取りやすく陳列します。商品を入れる際は、あえて雑多に配置することで、手に取りやすいお手軽さを強調します。
ジャンブル陳列は、商品の回転率を上げることにも効果的です。手に取りやすく、安価に見えることで、衝動買いを促すことができます。そのため、セール品や見切り品などをまとめて売り出したい時には特に効果的な手法です。
スーパー、雑貨店、電気屋などでは小さいサイズの商品のセールを行いたい場合に用いられています。
- 陳列棚の両端を活用するエンド陳列
エンド陳列は、陳列棚の両端に陳列する方法です。商品陳列棚の終わりでメイン通路に面するため、通りかかる来店者に見てもらいやすいのが特徴です。
なお、エンド陳列は場所により、次の4つに分けられています。
種類 |
陳列位置 |
陳列される商品の特徴 |
フロントエンド |
レジの向かい側に面した棚 |
・重量がある商品 |
バックエンド |
最奥の精肉・鮮魚売り場に面した棚 |
・面した売り場の関連商品 |
センターエンド |
中通路に面した棚 |
・新商品 ・陳列棚の関連商品 |
レジエンド |
レジに接している棚 |
・小さめの商品 ・使用頻度が高い商品 など |
エンド陳列は、来店者の目に留まりやすいため、売上アップに直結する効果的な陳列方法です。スーパーなどでは、特に見慣れた陳列だと言えるでしょう。
売れる商品陳列のテクニック
基本的な陳列だけでは、平均以上に売り上げを伸ばすことは難しいです。売上を伸ばすには、より多くの買い物をしてもらう必要があります。そのためには「特色のないお店」から抜け出さなくてはなりません。
ここからは、売上アップにつながる効果的な商品陳列のテクニックをご紹介します。
- 同一カテゴリの商品でグルーピング
まず最初に同一カテゴリの商品で、グルーピングをしてみるのがおすすめです。
買い物をする際、雑多な空間から目的の商品を探すのは労力がかかります。なかなか目的の物が見つからなかったり、関連商品の配置が遠かったりすると不便だと感じてしまいます。
しかし、同一商品または関連商品をまとめることで、来店者は手早く商品が探しやすくなります。一致するニーズから、他の商品の衝動買いを期待できる可能性もあるでしょう。
なお、グルーピングには次の3種類があります。売り場の特性や商品の種類に合わせて、適切な方法を選択してください。
- 垂直くくり・・・縦方向にグルーピングして陳列する
- 水平くくり・・・横方向にグルーピングして陳列する
- ブロックくくり・・・同一商品を縦横両方向にグルーピングする
- 売りたい商品のフェイスを増やす
来店者の目に留めてもらうために、売りたい商品のフェイス=陳列棚を増やすのも効果的です。陳列棚が増えるだけでも自然と目に止まりやすくなるため、衝動買いを誘発できる可能性が高まります。
ただし、むやみに増やせばよいというわけではありません。陳列棚を増やし過ぎて見通しが悪くなれば、商品が探しにくくなります。利便性を損なわないバランスも忘れないようにしましょう。業界の一般的な目安として、300坪前後の店舗で3~5列、600坪前後の店舗で5~7列と言われています。
- 商品のボリュームを維持する
商品陳列のボリューム(商品数)を一定に維持することも大切です。数が極端に少ないと来店者は限られた物の中で価値を見出しにくく、購入の決め手に欠けてしまいます。
逆に商品のボリュームがあると、来店者は在庫がある商品を人気商品と捉えやすくなります。安心感から「自分も購入してみよう」という心理にもなりやすいです。
商品陳列の効果を持続させるためにも、商品陳列の改善後は維持することも意識していきましょう。
- 売れ筋をゴールデンラインに配置する
商品陳列棚で最も手を伸ばしやすい「ゴールデンライン」も意識して配置してみてください。ゴールデンラインとは、陳列棚の85〜150cmの高さにある棚のラインのことです。
このラインの棚は目線の延長で手に取られやすく、商品が売れやすい傾向があります。特に売れ筋商品や売りたい商品を配置すれば、売上アップを狙うことができるでしょう。
また、陳列量を調整することも効果的です。商品陳列は量を少なくすると際立ち、高級感や特別感が増します。逆に量を増やしてPOPなどで強調すれば、お得な商品として演出も可能です。高級商品は陳列量を少なくし、お買い得商品は陳列量を増やすなど、商品の特性に合わせて陳列量を調整しましょう。
- 視認性が高い販促物を設置する
商品を手に取ってもらうためには、まず商品自体に目を向けてもらう必要があります。
そのため、視認性を高める販促物(POPなど)を設置し、商品を見てもらえるよう誘導を行いましょう。
販促物は注目を集めるだけでなく、商品の特徴やメリットをアピールすることもできます。商品への理解が深まるほど来店者は購買意欲が湧きやすいため、商品の特徴を強調したPOPや、目を引くデザインの売り場づくりなどが効果的です。
- 新商品は定番商品と組み合わせる
新商品はどうしても手に取ってもらいにくいこともあります。人気の定番商品がある場合はなおさら、新しい商品が選ばれにくくなるでしょう。
そんな時は、新商品を定番商品と組み合わせて陳列してみましょう。なお、定番商品と新商品を組み合わせるテクニックには、次の陳列方法があります。
種類 |
陳列方法 |
ダブルアタック陳列 |
陳列を3段9分割し、以下の位置に商品を配置します。 1.PRゾーン :売れ筋商品A/新商品A/売れ筋商品A ※新商品B、Cには最も売りたい商品を配置する |
育成商品中央配置型陳列 |
陳列を3段9分割し、以下の位置に商品を配置します。 1.上段:補完商品/新商品サンプル/補完商品 |
ダブルアタック陳列は、売れ筋商品で新商品を挟むことで両方の売り上げを伸ばす手法です。人気商品と並べることで、新商品も相乗効果により売上を上げやすくなります。
ただし配置する売れ筋商品は、あくまでも新商品のための引き寄せ役でいなくてはいけません。そのため、配置するのは新商品を邪魔しにくい、比較的安価な商品が適しています。
また、育成商品中央配置型陳列は、下段に訴求力のある売れ筋商品を大量に置き、釣られて上段の新商品も見てもらうことを狙った作りです。新商品の横には売れ筋商品と関連した商品を置くことで、自然に商品に関連性を抱きやすくなっています。
業態別の商品陳列方法の違い
商品陳列は、いずれの業態でも部分的に似ることはありますが、業態によって扱う商品や顧客層が異なるため、効果的な陳列方法には違いが生じます。
ここからは、スーパーマーケット、ドラッグストア、百貨店など、主要な業態別の商品陳列方法の特徴を詳しく説明します。
- スーパーマーケット
スーパーマーケットは、多種多様な商品を取り扱っている特徴があります。
来店者が必要なものを効率的に買い物できるようにするため、陳列は手に取る商品の順番を想定し動線を作ることが重視されます。
そこで、一般的なスーパーマーケットの陳列は次のようになっています。
- 野菜・果物売り場
- 精肉・鮮魚売り場
- 惣菜・パン
- 牛乳など
スーパーマーケットは、店内の外周に沿って、反時計回りに周るように構成されています。野菜・果物売り場などの需要が高いものは外周に配置され、内側のフロアには冷食・飲料・お菓子などが配置するのが基本です。
なお、最初に野菜や果物から始まるのは、色鮮やかな印象を与えて購買意欲を搔き立てるためだと言われています。価格も比較的安価な物が並ぶため、買い控えも防ぎやすい効果があります。
この売り場配置は、来店者が商品を見ているうちに自然と店内を回るように設計されているため、関連商品の購入を狙う配置が重要になります。
- コンビニエンスストア
コンビニエンスストアはスーパーと似ていますが、来店者の需要のほとんどがお弁当や惣菜などの特定商品に集中しています。スーパーのようにまとめ買いも少ないため、客単価も安くなりがちです。そのため、特定商品と一緒により多くの衝動買いを促す工夫が必要です。
そこでコンビニエンスストアでは、入口から奥に向けて次のように陳列棚を並べています。
- 雑誌や日用品
- 飲料
- お菓子
- アイス・冷食
- お弁当・お惣菜
- スイーツ・デザート
コンビニエンスストアでは、需要が高いお弁当やスイーツを最奥に配置するのが大きな特徴です。奥に配置することでお弁当などを買うまでに多くの商品の誘惑を受け、来店者は衝動買いをしやすくなります。
入口近くに雑誌や日用品を配置することで、来店者の店内滞在時間を長くする効果もあります。また、レジ前にはホットスナック(肉まんなど)なども配置することで、会計前にも咄嗟に買いたくなるような演出もしています。
- 雑貨屋
雑貨屋で商品を購入してもらうためには、来店者が思わず目を奪われるような魅力を感じてもらう必要があります。そのため、陳列はテーマを定めた雰囲気作りが重視されます。
テーマ別の商品分類の一例として、テーマを分類する場合は次のような分け方があります。
- テイスト(シンプル、ユニセックスなど)
- 同じような素材(木製、鉄製、革など)
- 同系色の色
- 似た柄
また、商品をただ並べるだけでは、来店者に強い魅力を感じてもらうことは難しいです。高低差をつけた陳列で見やすくしたり、区画ごとシンメトリー・アシンメトリーにするなど雰囲気作りの工夫が必要です。
多数の商品を扱うことから陳列が雑多になりやすため、商品が埋もれないように商品と商品の間に適度な空間を設けたり、照明を使って特定の商品に焦点を当てたりするなどの工夫が効果的です。
- アパレル店舗
アパレル店舗は雑貨屋と似ており、来店者に対していかに魅力を訴えられるかが購入意欲を左右します。店舗はレイアウトとディスプレイという2つの構成で成り立っていますが、商品陳列にあたるのはレイアウトです。
アパレル店舗のレイアウトは、次の3つの手法を主軸に作られています。
手法 |
特徴 |
メリット |
トライアングル |
三角形になるように商品を配置する ※正三角形に限らず、三角形の形状を活用する |
・形が違う物も配置しやすい ・狭いスペースも活用可能 |
シンメトリー |
左右対称に商品を配置する |
・対称が揃うことで目を引く ・異なる商品同士でもまとまる |
リピート |
似た商品を同じ角度で等間隔に配置する |
・来店者を奥へ誘導できる ・商品が目立ちやすい |
細かい陳列では店舗によりますが、アウターやトップスなどの商品のカテゴリ別に分けてある店舗もあります。アイテムでカテゴリが別れていることで、特定のアイテムが購入しやすくなっているのが強みです。
また、洗練された店づくりのため、カラーをまとめて統一感を出したり、同系色を並べることで規則性を持たせる陳列をおこなうことも多いです。店舗内に適度なまとまりを作ることで、雑多で安っぽい印象を与えないようにしています。
まとめ
商品はただ規則的に並べれば売れるわけではなく、売り込みたい商品のターゲット層に適切にアピールできる陳列を行うことが必要です。まずは自社の店舗で狙いたいターゲットを絞り、どのような商品を求めて来店するのかニーズを見極めましょう。
ターゲット層が定まれば、陳列すべき商品や魅せ方も自ずと定まってきます。
効果的な商品陳列は売上アップに直結します。本記事で紹介したテクニックを活用し、魅力的な売り場作りに取り組んでください。
【記事監修者】
倉持 政幸
経営コンサルタント兼小売店オーナー。早期から飲食店や店舗経営を視野に、複数種の店舗に勤務し経験を積む。飲食店、コンビニエンスストア、ネイルサロンなど様々な業態の店舗経営を経て経営コンサルタントに至る。
▼この記事をSNSでシェアする